2015年8月19日水曜日

「青い鳥」と“ぶらさがりインデント”

名作と言われながらも、なかなかきちんと接する機会のない作品は、意外とあるものです。特に外国文学、それも児童文学と言われるものの場合には、邦訳書が手に入りづらかったり、手に入ってもかなりの抄訳であることが珍しくありません。

そうすると、オリジナルを読んでみたら、知っているものとストーリーが違っていた、などということも起こってしまうのです。そこまでいかなくても、作品としての印象や味わいが大きく違っている、と思うこともあるでしょう。

  
例えば「アルプスの少女ハイジ」を完訳で読むと、アニメでしか知らない人は、後半部分でのペーターの役回りの違いにちょっと驚かれるのではないでしょうか。

あるいは「ジャングル・ブック」が、オオカミ少年モーグリのお話は一部に過ぎず、そのほかにまったく独立したお話も入った短編集であることも、あまり知られていないのではないでしょうか。

さらにチルチルとミチルと青い鳥が出てくるということは知っていても、「青い鳥」のオリジナルは戯曲として描かれているということも、多くの人にとっては意外なことかもしれません。戯曲として読むと頭に舞台設定なども浮かびますし、基本的に会話のやり取りで話が進んでゆきますので、作品の印象がずいぶんと違ってきます。

《望林堂完訳文庫》では、もちろん文庫名の通り「青い鳥」を戯曲のまま完訳でお届けしています。ご覧なってお分かりかと思いますが、レイアウトも戯曲やドラマなどのシナリオ(台本)と同じ形式を取っています。このレイアウト形式を“ぶら下がりインデント”と呼びます。


普通のインデントというのは、文頭を一定のスペースだけ下げるというものですが、この“ぶら下がりインデント”というのはその逆で、文頭以外を一定のスペース下げるという特殊なものです。

実はこのレイアウトにするために、かなり苦労したのです。

翻訳したテキストデータは、そのままではKindleでは読めません。Kindleで読めるようにするには、一旦一般的な電子ブックデータ形式であるepubというフォーマットにしてから、さらにmobiというKindle専用のフォーマットに変換します。

このepubデータを作成する時に、章の指定やルビ付けなどを含めた全体のレイアウトを行うのですが、当初“ぶら下がりインデント”をどう指定すれば良いのか、なかなかわからなかったのです。

それでも試行錯誤を繰り返し、やっとKindle上でも再現することができました。これで「青い鳥」の完訳を、きちんとした戯曲風なレイアウトでお読みいただけることになったわけです。こういう雰囲気をきちんと味わうことも、とても大事だと思ったからです。

ぜひ、きちんと“ぶら下がりインデント”が再現された美しいレイアウトの中で、登場人物たちのやり取りの妙をお楽しみいただければと思っています。