「砂の妖精サミアド」は原題が「Five Children and It(五人の子どもたちとそれ)」であるように、五人の子どもたち(主に、赤ちゃんを除いた四人の子どもたち)が次々と騒動を巻き起こす物語です。
すでに触れたように、その年齢は作品中では触れられていないのでわからないのですが、子どもたちの会話に出てくる、大人なぶろうとする部分と子どもらしい幼い部分が、大きな魅力であることは確かです。でも、だからこそ翻訳に苦労することも出てきます。
例えば手紙。アンシアが書く文章は、ちょっと気取っていて、でも回りくどく、さらに単語の綴りが間違っています。それをわざわざ英語の単語を示して綴りの違いを説明したら、きっと文章の流れが途切れて興ざめです。
そこで日本語を、わざと間違えることにしてあります。「おいしいそう」とか「心からで感謝している」という具合です。校正ミスではないことを示すためにヽを打ってあります。
そこで日本語を、わざと間違えることにしてあります。「おいしいそう」とか「心からで感謝している」という具合です。校正ミスではないことを示すためにヽを打ってあります。
「……この間お父さんが言っていたのを聞いたんだ、人は雨水に含まれているバイキングで病気になるんだって。ここにはたくさん雨水があったはずさ……雨水がすっかり乾いても、バイキングは残っているから、食べ物の中に入ってしまう。するとぼくらはみんなしょうこう熱にかかって死んじゃうんだよ」
「バイキングって何?」
「顕微鏡で見るとクネクネ動いている小さいやつのことさ」学者のような口ぶりで、シリルが言いました。
アンシアが質問しているように、二人ともGermanがドイツ人という意味になることも知らないで話しています(ですから本来ならGermanですが、小文字でgermanと書かれています)。そうすると「ばい菌」を「ドイツ人」と訳しておいて、注釈をつけたのではおかしなことになってしまいます。さすがに二人も「ドイツ人」は知っているでしょうから、「……ドイツ人で病気になるんだって。……」「ドイツ人て何?」という会話は変ですものね?
そこで、単に単語を間違えているだけでなく、間違えた単語が別の意味を持っているということを活かしたいために、あえて「ばい菌」を「バイキング」としてみました。
ここは偉そうに難しい単語を使って説明しながら、実は大間違いしている、ちょっと大人ぶったシリルの面白さを伝えたい場面なのです。そのことを優先して、上記のような訳を考えてみたわけです。
ただし、原文中に「バイキング(Viking)」などという言葉は存在しないので、これは一つの冒険です。
まだ翻訳途中なので、最終的に別のかたちに落ち着くかもしれませんが、こうした苦労をしつつ、現在も翻訳作業を続けております。
アンシアが質問しているように、二人ともGermanがドイツ人という意味になることも知らないで話しています(ですから本来ならGermanですが、小文字でgermanと書かれています)。そうすると「ばい菌」を「ドイツ人」と訳しておいて、注釈をつけたのではおかしなことになってしまいます。さすがに二人も「ドイツ人」は知っているでしょうから、「……ドイツ人で病気になるんだって。……」「ドイツ人て何?」という会話は変ですものね?
そこで、単に単語を間違えているだけでなく、間違えた単語が別の意味を持っているということを活かしたいために、あえて「ばい菌」を「バイキング」としてみました。
ここは偉そうに難しい単語を使って説明しながら、実は大間違いしている、ちょっと大人ぶったシリルの面白さを伝えたい場面なのです。そのことを優先して、上記のような訳を考えてみたわけです。
ただし、原文中に「バイキング(Viking)」などという言葉は存在しないので、これは一つの冒険です。
まだ翻訳途中なので、最終的に別のかたちに落ち着くかもしれませんが、こうした苦労をしつつ、現在も翻訳作業を続けております。