2019年11月24日日曜日

最近のブック・レビューをご紹介

Kindleにご投稿いただいた、うれしいレビューの数々です。
ありがとうございます。大きな励みになります!
レビューでご指摘いただいた誤字脱字等の修正も、可能な限りすぐに対応させていただきています。今後ともよろしくお願いいたします。
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ビロードのうさぎ
☆素晴らしい作品 2019年11月9日
 素晴らしい翻訳で、心から感動しました。

ケンジントン公園のピーター・パン
童話的な読み心地の短編を探す誰かへ 2019年11月9日
 "『では、もうこれからは、僕、本当の人間ではないんだね』とピーターは尋ねました。『そうさ』『本当の鳥でもないんだね』『そうさ』『何になるの?』『おまえは中途半端のものになるんだよ』"1906年発刊の本書はナイーブかつマージナルな存在としてのピーター・パンを詩情豊かに描いた童話的一冊。
 個人的にはピーター・パンと言えば、ディズニーのアニメ映画。【緑色の服を着た空飛ぶピーター・パン】を筆頭に、ウェンディやティンカーベル、フック船長といったキャラクターが活躍する冒険物語が浮かぶ方は多いと思われるのですが。実は紛らわしい事に、そんな映画原作の『ピーター・パンとウェンディ』の他に『ケンジントン公園のピーター・パン』と【原作が2つある事】をご存知の方は少ないのではないでしょうか?
 今回紹介する本書は、その内、先に書かれた前日譚的な『ケンジントン公園のピーター・パン』の方で。前述したキャラクター達はピーター・パン(こちらは何と全裸かつ飛べません)を除いて一切登場せず、また舞台も実在の公園、ケンジントン公園というミニマムさで、人間が全て最初は【鳥の赤ちゃんとして生まれ人間へ】死ぬとまた【人間から鳥へとなる】世界において、どちらにも属せなくなった【中途半端な存在】としてのピーター・パンが妖精や鳥たちと生活する様子が描かれているのですが。何ともディズニー映画をイメージして読み出すと【物語の印象が違い過ぎて】驚かされます。
 一方で、では退屈かと言えばそんな事はなく。こちらはこちらで【繊細な童話的な色合いが強くなっていて】永遠に人間の大人にはなれなくても、またディズニー映画の様に皆のリーダーにはなれなくても【純粋かつ豊かに過ごすピーター・パン】の姿は別の作者の作品ですが『星の王子さま』の王子さまと重なって感じられ、妖精や鳥、母親や女の子とのエピソードも含めて、むしろ人間の大人になったことで【失ってしまった大切な何か】を問われているような不思議な読後感でした。

ピーター・パン好きはもちろん、童話的な読み心地の短編を探す誰かにオススメ。

アルプスの少女ハイジ
ハイジと周囲の絆 2019年10月28日
 再読だが、感動的でした。

プログレ百物語: プログレッシヴ・ロック名盤百選
これを読みながら聴いてみたい 2019年9月8日
 これまでKingCrimson, PinkFloydなど、主だったプログレは聴いてきた。しかし、35年以上前のFMのプログレ特集で聴いたNewTrollsやI Poohなどが忘れられず、あの時何を聴いたのか時々AmazonMusicで探していた。
 今回また聴きたい気持ちがうずいてしまい、文書でも知りたいと思い、kindleで見つけて読んだ。個人的に印象に残っているものを挙げているとのことだが、私には十分な情報量である。説明はとても丁寧であり、読みながら聴いてみたいと思わせる文章である。
 kindle unlimitedで読み、正式にkindleで購入した。
  
アルプスの少女ハイジ
翻訳が素晴らしい 2019年7月6日
 絵が折々に出ているので、楽しく読んでます。
  
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2019年11月21日木曜日

「ねじの回転」を平易な文章で訳す難しさ(その2)

訳者泣かせの難解な文章が続く「ねじの回転」ですが、ようやく第二稿が終わろうとしています。
  
奮闘努力のあとを、さらに少しご紹介します。
刊行まで、今しばらくお待ち下さい。


Into this attitude Mrs. Grose immediately and violently entered, breaking, even while there pierced through my sense of ruin a prodigious private triumph, into breathless reassurance.
Henry James, "The Turn of the Screw", 1898.

そこへグロース夫人が飛び込みました。もうぶち壊しだと思いつつ、私だけが勝っているという直感が内心に射していたところへ、グロースさんが息もつかずに割り込んできて、フローラを安心させようとしたのです。
小川高義 訳(新潮社 2017)
  
グロースさんがたちまちその態度に強く引き寄せられ、フローラを慰めはじめるのが見えましたから。破滅の予感と、それを貫くわたし個人の勝利の感覚がありました。
土屋政雄 訳(光文社 2012)
  
するとそのフローラの態度を思いやったグロース夫人が、即座に無理やり口を挟んできて、息もつかせずに、励ましの言葉をまくしたてたのです。夫人個人の勝ち誇ったような思いが、わたしの破滅したという気持ちを突き刺すことになるとも知らずに。
毛利孝夫(望林堂 2019.11. 刊行予定)

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2019年11月7日木曜日

「ねじの回転」第1稿完成!

《望林堂完訳文庫》第20弾である「ねじの回転」の第一稿が、ようやくできあがりました。

間に「ハイジ」の別バージョンを出したりしましたが、翻訳書の新作としては6月に刊行した『ワンダーブック』から、5ヶ月も経ってしまいました。

心に浮かんだ通りに表現する「意識の流れ(stream of consciousness)」という手法の先駆的作品と言われる本作ですが、実際、その文章は、さまざまな思考や感情が次から次へと湧いてくるのを、そのまま書き留めたようなものです。

そのため、一文が長く、そこに次々と修飾の語、句、節が加わって、文全体の構造を掴むのも一苦労な上に、ひねった表現や抽象的な描写も多くて、日本語にするのがまた難しく、予想外に時間が掛かってしまいました。

これから、校正とルビ付け作業を行いながら、11月の出版を目指します。
今しばらくお待ち下さい。
  
表紙案
  

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2019年11月4日月曜日

「ねじの回転」を平易な文章で訳す難しさ

訳者泣かせの難解な文章が続く「ねじの回転」ですが、ようやく第一稿が終わろうとしています。
  
平易な表現で、どれだけ〝話者〟の心の動きを読者にスムーズに伝えられるかが、大きな課題です。ただいま、クライマックスと奮闘中です。
  
出版まで今しばらくお待ちくださいませ。


He appeared now to be thinking of something far off and that reached him only through the pressure of his anxiety. Yet it did reach him. “Did I _steal_?”
Henry James, "The Turn of the Screw", 1898.

マイルズは何かしら遠くにあることを考えるかに見えました。それは不安感に絞られるように、やっとマイルズに届くのでしたが、とにかく届いたのです。「盗んだってこと?」
小川高義 訳(新潮社 2017)
  
遠くの何かを思い出そうとしているようでした。最後には——不安に後押しされてようやく——思い出したようです。「ぼくが盗んだ、と……?」
土屋政雄 訳(光文社 2012)
  
マイルズは今、遠くにある何かのことを考えているように見えました。そして、不安に押しつぶされそうになりながら、その何かがようやく頭に浮かびました。そう、マイルズは、わたしが言わんとしていることが分かったのです。「ぼくが、〝盗んだ〟っていうの?」
毛利孝夫(望林堂 2019.11. 刊行予定)

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