「星の帆船」は原題を〝The Ship That Sailed To Mars(火星へ航海した船)〟と言い、イギリスで生まれ南アフリカに移住して建築家として成功したウィリアム・ティムリン(William Timlin)によって1923年に出版されたファンタジーです。
その大きな特徴は、オリジナルの幻想的な物語に加え、48ページのキャリグラフィ(手書き装飾文字)と48ページのイラストを著者自らが描き、一冊のとても美しい絵本をすべて一人でで作り上げたところにあります。
特にそのイラストは、宇宙を舞台にしたファンタジーを見事にイメージ化しており、繊細なタッチや陰影の強い色合いなど、イラストレーターとしても一流であることを感じさせる、とても魅力的な作品群となっています。
なお、今はなき立風書房から本作の唯一の翻訳書が出ていましたが(今回のタイトルは、この立風書房の書籍タイトルを使わせていただいています)、現在は古書としてしか入手できないだけでなく、掲載されていたイラストも48枚全てではなく、さらに、絵によっては四隅がトリミングされていたりする、少し残念なものでした。