2015年9月28日月曜日

次回配本第15弾は「砂の妖精サミアド」

《望林堂完訳文庫》として邦訳を出す児童文学書を選ぶ際に、いくつかこだわるポイントがあります。それは例えば次のようなものです。

・名作と言われながら、きとんとした邦訳書が出ていない。
 (訳が古くて読みづらい/抄訳ばかり、も含む)
・初版当時の挿絵が魅力的である。

もちろん書籍全体でこうしたポイントを満たす作品が、翻訳候補に上がりやすいのですが、Kindle書籍として出す以上、Kindle書籍としてこうしたポイントにひっかかるものも、十分に対象になります。

そこで今回候補の最後に残っていたのが「ドリトル先生航海記」と「砂の妖精」の二点でした。しかし現在のところ、「ドリトル先生航海記」はKindle本が出ているのに対し(残念ながらオリジナルの挿絵は使われていませんが)、「砂の妖精」はKindle本がありません。 

そこで次回配本はE.ネズビット (E.Nesbit)作の「砂の妖精サミアド」ということに決定いたしました。イギリス・ファンタジーの名作です。初版本にはとても美しい挿絵が多数収録されているのも大きな魅力です。 

実はこの「砂の妖精」、「おねがいサミアドん!」というタイトルで1985年〜1986年にNHKのTVアニメになったこともあるという、実は日本と縁の深い作品の一つなのです。同時にまた「ハイジ」や「ピノッキオ」や「マーヤ」などと同じく、アニメは知っていてもオリジナルの完訳を読んでいる人は少ないという、とても残念な名作文学の一つでもあるのです。




原題は「Five Children and It(五人の子どもたちとそれ)」ですが、これまでの邦訳書のタイトルとしては「砂の妖精」あるいは「砂の妖精と5人の子どもたち」となっていました。しかし、もともと1900年に「ストランド・マガジン」で連載された時は「サミアド、あるいは数々の贈り物(The Psammead, or the Gifts)」と、「サミアド」という妖精の名前が使われていたようなので、今回はそれをタイトルに入れて「砂の妖精サミアド」とすることにする予定です。

この、妖精と言うにはちょっとグロテスクなサミアド(そこがまた斬新なところです)と、五人の子どもたちの織りなす楽しい物語です。どうぞご期待ください!