2018年10月13日土曜日

「ほら男爵の冒険」の中立性

長らくお待たせしております「ほら男爵の冒険」ですが、翻訳第一稿が完成し、ただいま校正作業の真っ最中です。掲載予定の150点に及ぶモノクロ図版もほぼ揃い、大量の脚注もつけ終わり、着々と書籍としての体裁が整いつつあります。
  
  
翻訳してあらためて思うことは、大航海時代というヨーロッパの国々が海を渡り世界に覇権争いをしていた時代の物語なのに、悪意のあるなしにかかわらず、意外なほど差別的な表現や描写が少ないということです。
  
西欧文明や自国の文化を広め、そしてキリスト教を布教することは、その動機や姿勢がどれほど純粋で善意と誠意と情熱にあふれものであっても、結果的に他の文化や価値観や生活を否定することにつながります。そして、悪意がないからこそ、より悪質であったりするものです。

でもミュンヒハウゼン男爵の話には、常にまわり全体に対して適度な距離感があります。良いか悪いかでも、優れているか劣っているかでもなく、ただただ、不思議だが本当なのだ、という視点だけで語られてゆくのです。
  
そんな馬鹿な!と思いつつ、ナンセンスゆえにあらゆるものを受け入れる男爵の中立性は、極めて普遍的な魅力に富んでいるように思います。
  
完成まで、今しばらくお待ちくださいませ!

   
  
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